重点課題として捉えられ始めたDX
皆さんは、「デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
近年、急速に全世界的に普及してきた言葉であり、定義は組織により細かな違いはありますが、おおよそデジタル技術を軸として実現するビジネス変革と位置づけられています。
デジタル・トランスフォーメーションという言葉を知らなくても、
その根幹を成す技術手段であるAI、IoT、5G、RPAといった言葉のいずれかは、
ほぼ全ての人が認知しているものと思います。
株式会社BlueMemeの調査によると、DXという言葉をご存知の経営者において、
89.4%の方がDXへの取り組みを経営課題として捉えているとのアンケート調査が発表されました。(※1)
我々にご相談を頂く方は既に経営における重点課題としてDXを捉えている方がほとんどではありますが、その他の様々な機関、企業から発表されているDXに関する調査結果からみても、現在、DXが注目されているのは間違いないでしょう。
では、なぜ今、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が注目されているのでしょうか?
今回は、その点について記載していきたいと思います。
DXが注目されている主な理由
①カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)の向上が企業の優先課題であるため
日本のみならず世界中で「カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)の向上」が今後のビジネスにおいて最重要視されています。
日本も含めあらゆる各国のGDPに占める非製造業の付加価値シェアの推移は大きく上昇しています。皆さんも生活するうえで実感されていると思いますが、これはモノからコト消費への移行が顕著であることを示しています。
消費者自身が経験を発信する力を持ち始め、消費者が求めるものが機能的な充足だけではなく、感動や共感といった、精神的な充足も重きを置いた製品・サービスの選択をするようになり、いわゆる「マーケティング3.0」の時代が到来したことも大きく影響しています。
そして、顧客体験の向上を実現する中核を成すものがDXとなる場合が極めて多いことがDXが注目される理由となります。
また、コロナウイルスによって、顧客が求めるものが変遷し、その対応の有効手段がDXである事例であることも非常に多いところがあります。
②デジタル変革による市場破壊が頻発している
これは本コラムをお読み頂いている方の多くが経験されているかもしれません。
デジタル・トランスフォーメーションにより、既存市場に新たな価値を提供する新規参入者が台頭し、ビジネスモデルの破壊・再構築がもたらされるようになりました。
そして、重要なことはデジタルによる変革であるため、技術や資本を多く持たない新規参入者でも市場破壊ができることにあります。つまり、参入障壁が従来と比較して極めて低いのです。
例えば、紙での情報交換や取引が電子データに代わり、動画は光ディスクではなく、ストリーミングで見る時代になりました。
特に物理的に取得が必要であったものが、無くなっている場合、多くはデジタルによって代替されているはずです。
現在、自動車メーカー各社がしのぎを削って自動運転に取り組んでいます。
これはデジタルによって、無人での自動運転が可能となることで、それが実現できるかどうかで勢力図が一変する世界となるからです。
DXが注目されている主な理由(続き)
③旧態システムによるコスト的不利がますます顕著になっている
自社が旧態(レガシー)システムを活用し続ける一方、新たなシステムを活用する競合にコスト的に対して極めて不利な状況に陥る状況が顕著になっており、収益性の悪化に繋がっています。
経済産業省が発表したDXレポートにおいては、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存し、DXが実現されない場合には経済損失は2025 年以降、最大12兆円/年にのぼる可能性があると指摘されています。(※2)
近年、特にAI、RPAといった技術や新たなシステムが出現しているなか、新たなシステムを取り入れる企業と既存システムを使う企業において運営コストに大きな差が発生し、企業の競争力に大きな影響を与えています。
④コロナ禍においても、企業のDX投資は増加の一途をたどる
コロナ禍においてもDX市場は成長を続ける(他社がDX投資を積極的に展開する)ため、DXに取り組まないことは自社存続の大きなリスクとなります。
DXによるビジネス変革にはビジネス面・技術面の双方を理解した人材による変革が不可欠であり、高度なノウハウを有したコンサルテーションが重要な役割を果たすと見られていますが、IDCの調査によるとデジタル関連ビジネスコンサルティングは2024年までに市場成長率が年間25%になると予測されています。(※3)
コロナ禍において、多くの業界が痛手を負う中、それでもDX投資が増加することは、企業としてDXへの取り組みが重要視されていることが表れていると考えられます。
⑤社会課題を解決する企業に対する消費者・投資家の関心の高まり
こちらに関しても、カスタマーエクスペリエンスの向上と同様にビジネスに影響を与える重要な傾向です。特に代表されるものがSDGs(※4)への貢献でしょう。
消費者の消費判断、投資家の投資判断ともに社会課題を解決する企業への関心が高まっていることで、近年、SDGsにどのように貢献していくかを表明している企業が急増しています。
そして、これらの目標達成に向けて大きな役割を果たすのが、ITをはじめとしたテクノロジーによるビジネス変革が重要であるため、DXへの取り組みが注目されています。
これからの時代においては、中小企業にもSDGsをはじめとした、社会課題をどう解決する企業なのかという視点で注目されることになるでしょう。
DXは企業にとって企業成長の機会であり、脅威でもある
デジタル・トランスフォーメーション(DX)が注目される理由について、様々な視点で述べさせていただきました。
AI、IoT、RPA、5Gなどを駆使したデジタル・トランスフォーメーションによるビジネス変革にチャレンジしている企業は、いまこの瞬間にも増え続けています。
DXによる市場破壊についても触れましたが、これは自ら市場破壊を実現することによる企業成長を実現するチャンスでもあり、他社によって市場破壊を起こされ淘汰される可能性も大いにあります。
我々はどのような企業にもDXによりビジネス変革を成し遂げるチャンスはあると考えています。
今後ともアスナビスではDXのための資金獲得から変革に至るまで、中堅・中小企業様のビジネス変革を支援してまいりたいと思います。
【出典】
※1 PR-Times「DX(デジタルトランスフォーメーション)を「知っている」経営者は70%、うち89.4%が経営課題として捉えていると回答」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000016434.html
※2 経済産業省「DXレポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
※3 IDC「国内コンサルティングサービス市場予測を発表」
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46448620
※4 SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、2030年までに世界が取り組むべき17の目標として2015年9月に国連総会で採択されました。この目標は、2000年から2015年に掲げられたMDGs(ミレニアム開発目標)の目標や指標が含まれています
