ポイントを抑えることで、中堅・中小企業でもDXによるビジネス変革は可能

近年、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は大きな注目を浴びており、企業の規模を問わず、経営課題として捉えている方は非常に多いと思います。

アクセンチュア社の調査によると、日本企業の経営幹部の77%が、人工知能(AI)をビジネス全体に積極的に導入しなければ、2025年までに著しく業績が低下するリスクがあると判断しているとのこと(※1)で、IDCの調査なども同様のレポートを挙げています。

しかしながら、リソース面(人材、資金等)やパートナー連携の難しさなどの制約がある中堅・中小企業において、大企業と同じようなリソースの使い方やパートナーシップを持ってデジタル・トランスフォーメーションを進めることは現実的に困難であり、中小企業にとって失敗のリスクは大企業の比にならないほど高いことが現状でしょう。

しかし、DX推進のポイントをしっかりと押さえることで、ビジネス変革による企業競争力の大幅な向上は大いに可能です。

中小企業ならではポイントを抑え、成功を導く

それでは、中堅・中小企業においてDXを成功させ、企業のビジネスを変革させるポイントをお話したいと思います。

①ビジネス面・技術面双方を理解したキーパーソンを擁立する
基本的に、デジタル・トランスフォーメーションを進めるうえで重要なことはビジネス面と技術面の双方を理解したキーパーソンを軸に進めることが何より重要になります。

日本ではAIプロジェクトにおいて失敗が多く、PoC(試験的なAI開発の取り組み)止まりで終わることが多いことは皆さんもご存知かもしれません。(Pactera Technologiesのレポートによると、企業の85%のAIプロジェクトは最終的に意図したような結果を事業にもたらしていないとのことです(※2))

なぜこのような事になるかと言うと、端的にいえばビジネスで成功するはずの「あるべき姿」を描けていないことが最大の原因になります。これは、一流のAIエンジニアがいれば良いわけではありません。
彼らはAIプログラムそのものを構築することは一流であっても、ビジネスで成果を収めるAIが何かを定義することは専門ではないのです。
「あるべき姿」が何かを考える前に、「AIで何をするか」という考えから始まってしまうと、おおよそプロジェクトは失敗に終わります。

大事なのはAIという手段ではなく、「あるべき姿」という目的を実現することにあります。あるべき姿を描くにしても、実現するにしても、最大限の利益をもたらすよう、AIやIoTといったデジタル分野のみではなく、時にはハードウェアへの着手も提案できる人材が必要となります。

そのような人材をなるべく低コストで確保することが大きなポイントの一つになります。

②中小企業の制約を踏まえたうえでの「あるべき姿」を描く
前述した「あるべき姿」ですが、他社状況や外部環境(経済、政治、技術、社会の情勢など)だけでは判断はできません。企業における内部の制約(自社の資金、人材等)も加味し、定める必要があります。

この内部の制約という点で大手企業と中堅・中小企業には大きな差が存在します。

例えば、プロジェクトにかける自己資金額、実施期間、プロジェクト開始から利益を回収するまでの期間、自社が対象とすべき市場の領域などが大手企業と違い、細かい点まで留意しながら進めることが必要となります。大手企業の場合は、多少計画と実績に乖離があったとしても、規模を活かした力技が可能となる場合がありますが、中小企業においては、わずかな計画との乖離が致命的になる場合があります。

つまりは、中堅・中小企業においてDXによるビジネス変革を実現するには、大手企業における事例の真似事ではなく、大手企業以上に自社の状況を理解しながら進める必要があるのです。

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