デジタル・ディスラプションの脅威は他人事ではない

皆さんはデジタル・ディスラプションという言葉をご存知でしょうか。
近年、日本でもよく使われるようになった言葉ですが、ディスラプションは英語で「崩壊」を意味する言葉であり、デジタル・ディスラプションとはデジタルテクノロジーによって、すでにある産業を根底から覆す(破壊)ような革新的イノベーションが発生することを意味しています。

1995年においての時価総額上位10社のうち、過半数は製造業が占めていましたが、2015年のわずか20年の間にICT(情報通信技術)関連製品を扱う企業が多数を占めるようになっています。(※1)
AIやIoT、5GといったICTと親和性の高い技術が普及するにつれ、この傾向は更に大きくなると考えられます。

企業におけるデジタル・ディスラプションの認知・対応に関しては、デロイトトーマツの調査によると、サーベイ回答者の87%が自身の業界がデジタル技術によって穏やかにまたは大いにディスラプションに直面することを知っていると回答していますが、自身の企業がディスラプションに十分に対処していると思うと回答したのはわずか44%であったという調査報告が出されています。(※2)

しかも、その44%はあくまで自己評価であるため、客観的に見たときに、実際にデジタルディスラプションに本当に対応ができている企業というのは、44%を大きく割っていることは間違いないと思います。

デジタル・ディスラプションの脅威は今や、多くの企業が認知しているものの、ほとんどの企業が手が打てていない現状があると考えられます。

なぜ市場破壊は「デジタル」によって発生しやすいのか

近い将来、デジタルディスラプションが身近に起こりうる業界の例をあげると、自動車業界が該当すると考えられます。
従来の自動車業界においては、いかにエンジン性能を上げるかという点に焦点が当てられたハードウェアに関する競争がメインとなっており、数十年間にわたり、ほとんど業界プレイヤーが変わらない世界となっていました。

しかし、今や自動車業界においては業界の変革を「CASE」が握っていると言われています。「CASE」とはConnected(コネクテッド化)、Autonomous(自動運転化)、Shared(シェアリング化)、Electric(電動化)のそれぞれの頭文字を取った言葉です。

つまり、自動車業界が最も恐れていることは、ライドシェア事業者のUberTechnology、AIで様々な取組を実施しているGoogle社などのデジタルを中心とした強みを持つ企業に市場変革を起こされることなのです。

実際に、Google社が自動運転などで先行した取組みを実施していることは多くの方がご存知だと思います。

自動車を例に挙げましたが、他にも、動画はDVDレンタルからストリーミングに代わり、紙での情報交換や取引は電子データへと置き換わりました。これらの業界では大きく業界の主要プレイヤーが入れ替わっています。

つまり、「なぜ市場破壊はデジタルによって発生しやすいのか」という問いに対しては、デジタル・ディスラプションは根本的に従来の市場構造の変革とは、及ぼす範囲も影響も次元が違うことが多いため、従来の業界プレイヤーとデジタルに強みを持つ企業が大きく入れ替わる市場破壊という形でイノベーションが実現されやすいためだと考えています。

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