あらゆる企業で、顧客体験の向上が最優先課題に位置づけられている
「顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)」とは、顧客が企業の商品やサービスに興味を持ち、その商品・サービスを実際に利用し、アフターフォローを受けるまでの一連の体験のことを言います。
近年、「顧客体験の向上」を経営課題として捉えている企業が急速に増加しており、今や中堅企業、中小企業でも多くの企業が経営課題として捉えています。
ある米国企業の調査によれば、今後12カ月のビジネスにおいて、優先的に取り組むべき課題に「CXの向上」を挙げる企業が80%を超えたとのことです。(※1)
今や、あらゆる業界において商品やサービスそのものだけでなく、顧客がその商品やサービスを使うまでのプロセスや、実際に使い始め、使い終わった後に至るまでのプロセスで質の良い顧客体験を提供することが重要視されており、この流れはもはや不可逆のものになっています。
なぜ顧客体験の向上が重要視されているのか
それでは、なぜ顧客体験の向上が重要視されているのか考えてみましょう。
【顧客体験が重視される理由①】
顧客が自らの体験を見知らぬ第3者に伝える力を持ち始めた
まず一つ目の大きな要因は、消費者が情報を収集し、さらには自身で情報を発信する力を持ち始めたことにあります。
デジタル化の進展とともにさまざまな情報が流通し、消費者はインターネットを介して、ウェブページやツイッターなどのSNSから容易に商品やサービスの情報を収集し、さらには自身が経験した製品・サービスを探す活動から、購入し、体験し、アフターフォローで受けた経験を第3者に伝えるようになったのです。
この一連の顧客体験のなかで、非常に悪い体験があれば、そこをフォーカスして伝える人もいれば、良い経験にフォーカスして伝える人もいるでしょう。
つまり、製品自体に特徴が薄くとも、顧客が体験したプロセス内に特徴があれば、その部分を顧客はフォーカスし、発信することになります。
【顧客体験が重視される理由②】
顧客が商品・サービス選定に「情緒的価値」を求める機会が増加している
皆さんの周りを見渡してみてください。今、私が執筆しているところから見渡すとカフェやクリーニング屋、パソコンやマウスなどが目に入ってきますが、それぞれの商品やサービスに大きな違いがあるでしょうか?
商品やサービスの「機能的」な部分でそれほど大きな違いが存在しているものは、実はさほど無いと思います。
ではなぜ、私たちはお気に入りのカフェやクリーニング屋、パソコンメーカーなどがあるのかというと、例えば満足感や優越感といった「情緒的価値」の部分を認知し、お気に入りとしてみなしていることが多いのです。
例えば、スターバックスでは店内に流れる心地いい音楽や座り心地の良い椅子、おしゃれな内装、wi-fiを完備するなど、来店者が快適に過ごせるようにするための工夫が凝らされています。
これによりコーヒーを求める顧客だけでなく、隙間時間を解消したい人や、集中して作業をしたい人などにも利用されるカフェとなっています。
【顧客体験が重視される理由③】
消費市場のサイバー空間移行に伴う顧客対応のため
多くの方が実体験として、Amazonや楽天などのECサイトをはじめとしたネットショッピングを使ったことがあると思います。
今まではリアル空間(スーパーなどの店舗)でしか実現できなかった商品の購入活動が、あらゆる商品においてインターネット上で購入が実現できるようになりました。
IDCの調査によると、インターネットに接続するユーザーの一人あたりの1日の端末操作回数は15年で584回、20年で1426回であり、25年には4909回まで飛躍的に向上すると予測されています。(※2)
つまりは、人々がインターネットという世界にアクセスする機会は大幅に増えてきており、インターネット空間にて消費行動を完結することは今後、ますます増加していきます。
多くの商品・サービスでこの流れは止まらないため、顧客への対応は必然的にインターネットを介したものにせざるを得ないのです。